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ぼくはこれからだ

僕はこれからだ

小川 未明

「新児童文化 第3冊」1941(昭和16)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,555 字 · 17 页

青空文庫

どこかの煙突から、立ち上る白い煙が、風の方向へかきむしられるように、はかなくちぎれています。ぴかりと光ると、達吉は、はっとして、

「雷だ!」と思った瞬間に、鼓膜の破れそうな大きな音が頭の上でしだして、急に大粒の雨が降ってきました。また光った! そのたび大空が、燃えるように青白いほのおでいろどられて、明るく家屋も、木立も、大地から浮き上がって見られた。

「これは不気味な天候になったものだ。」

伯父さんは、あっけにとられながら、やっと口をききました。そのとき、達吉が、准尉の顔を見ると、戦地へいってきた兵隊さんだけあって、いささかのおじ気も色に見せるどころか、かえって微笑んでいました。

「戦争のときは、こんなですか?」

達吉は、ぴかり、ゴロゴロ、ド、ドンという電光と雷鳴のものすごい光景に、父が戦死したときのことを想像して、つい思ったことを口に出して、きいたのであります。すると、准尉は、

「まったく、これと同じです。すこしも違いがありません。徐州攻撃のときなどは、もっとひどかったです。」

「ほ、ほう、こんなですかな。」

「なにしろ、砲弾が炸裂すると、たちまち目の前が、火の海となりますからね。