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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

お婆さんの選ぶ歌はこんなものですわ」

「御実感ですな。あなたのお宅は評判の御円満ですから」

おかしみのある書店の主人がこう言ったので皆笑った。

老先生は赤くなって、

「じゃあ、あなたの選歌を発表して御覧なさい」

「私のは、

遅速も汝をこそ待ため向つ峰の椎の小枝の相は違わじ

逢い曳きの時十分遅れると、もうさっさと帰ってしまうのが、今の娘気質と聞いています。これは残念だ。椎の小枝のように、少々出足に早い、遅いがあっても、待って貰いたいものであります」

皆吹き出した。

「しかしいい歌だな」

と仁田さんは首を振った。「やっぱり違った人が選ばんと見落すね」

「今度は君の番よ」

と書店の主人が私に促した。

「久方の月夜を清み梅の花心に咲きて吾が思える君」

私はいささかきまり悪かった。

「少年らしく、純粋な感じがしていい」

と仁田さんは言ってくれた。

「今度は鈴子さん、あなたも出しなさい」

と進行係のつもりの書店の主人が言った。

仁田さんはただニコニコしていた。

「どうぞ」

と女学校の先生が促した。鈴子は恥ずかしそうにしていたが、

「茅花ぬく浅茅が原の壺すみれ今さかりなり吾が恋うらくは」