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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
そう思うと私は彼女とその洲を歩きたくなった。
「少し海ばたを見ない?」
「ええ」
と彼女は並んで歩き出した。「涼しいわね。あたしあれからお湯にも入らないし、汗でじとじとよ」
彼女は浴衣の胸をひらいて涼風を入れた。
「今夜はいい夜だ。どこまでもこうして歩きたいな」
「ほんとにねえ」
二人はしばらく黙って歩いた。
「光り虫が」
と彼の女は立ち止まって海べにうずくまった。そして手の平に海の水をすくいとった。
「これ、まだ光ってるわ」
「どれ」
と私は覗き込んだ。
「おや、これはつるんでるんだ。あんたの手の平の上でつるんだ」
「あらっ」
と言って彼女は砂の上に振り捨てた。
「素敵だなあつるみながら光ってるなんて」
彼女は夜目にも面を赤らめたらしかった。そして、何とも言わなかった。けれども私たちは手をとり合っていた。
私たちは波の寄る汀をこうして長く歩いた。どうで年に一度の住吉祭りの、わけて今夜は夜通しお神楽があるのであった。
かえり見すれば、神楽場の空は明るく、群衆のざわめきはここまでも聞えて来るのであった。
やがて小さな谷川が清水ながらに海に注いでるところに来た。彼女は素足のままだったが、草履を脱いで、裾を端折った。