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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
作品などもいやしくも人間の心情のニューアンスなら、万人の心に必ず解るのだ。読者を信じて高い、深いことを書くべきだ。レベェルを下げる必要はない。
その友だちはよろこんでそのちゃんちゃんを着ていた。その友だちの家は綿屋と言って裕福だったのが落ちぶれたのであった。私が数日してその家に遊びに行くと、その子の父親の綿松という人は、私の祖母をいいお上さん(敬称)だと言い、絵本の弘法大師一代記をめくりつつ、私とその子に話してくれた。恐らくこれが初めて紫の雲などたなびいている聖人のことを印象した発端だろう。その子の父親はいつも店先きに小鳥を沢山飼い、町に葬式があれば必ず造花を引き受けていた。
私の父は祖母を敬い、養母として厚く扶養していた。祖父は私の産れぬ前死んでいたが、父が祖母に声を高くした事など一度もなかった。お上さんという敬称で家中の者に大事にされていた。どうも父はよく出来た人だった。私などは父に比べると放逸人だ。晩年祖母が死病につかれた頃など祖母は父を一番好いていた。
ただ私の家から二丁離れて武村という分家があり、私の母の妹が分れて出た家だが、よくある事で、分家は可愛ゆく、祖母がよく店の代物をそっと持出しては、分家へぬかすので、母にこぼしていた。