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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
何という純一な、たましいを打ちこむ生活材料の乏しい今日このごろの生活であろう。十倍、百倍の生活材料を以てして遂に瓦礫や、死かばねの堆積に過ぎないのだ。私は幾度でもくり返してこれが嘆かれる。心から一枚のハガキを書き、身に沁みて半夜の宴が語りたい。
幼稚な演説会。謄写版ずりの回覧雑誌、山登りと野営(キャンプとはまだ言わなかった)幻燈器械(映画はまだ田舎になかった)を携えての近村への巡回講演、その中でも比叡尾山の「霧の海」を見るために山上の寺で夜を明かしたことや、江の川を舟で下ったことなどありありと印象に残っている。「霧の海」というのはこの巴峡の地方の呼び物であった。海へ十八里もへだたって、汽車もない地方では海へのあこがれは皆の心にあり、一生海を見ずに終るものも少なくなかった。そこで海へのあこがれはこの霧の海を発見させたのであった。三つの川の巴を画くこの地方は霧がとりわけ深かった。比叡尾山は馬洗川のほとりに連なる山脉の中での一際すぐれた英峰であった。
夏の夕方から出かけてこの山の頂上にある古寺で、蚊やりをいぶしながら色々と囀り交わして、夜を更かし、疲れて少し仮寝したかと思うと、