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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
牧君も一度も先生に訴えたことはない。それは後の祟りを恐れるからではない。子供たちのことは子供仲間で解決つけて、大人の所へは持って行かないという不文律が支配しているのだ。そしてそんな事をするものがあれば卑怯とする気を皆持っている。
しかも子供でも本人は大人と同じように真剣に苦しんでいるのだ。
私も一度も先生に訴えたことも、親に訴えたこともなかった。
が京市という子は成績がよくて、裕福な家の子である私を敵にするよりも妥協しようと努めだした。そこで私は自ずと両方の間に立つようになり、そして京市君にせがまれて、家が売っていた砂糖を持って行ってやったり、筆墨を盗んで持って行ってやったりした事もある。つまり妥協と買収とが行われたわけだ。子供の社会にももうちゃんとそれがあるのだ。そして私は京市にせがまれてそうしていることを卑怯として、良心が傷いていた。大人の心理と少しも違わない。
陶山利一という年上の子は街の中で凧をあげるから持っていてくれと言って、私が持っていると糸枠を持って駈け出してその勢いで凧があがった。今度は私のを持っていてくれと言って、駈け出そうとすると、いきなり私の凧を破いてしまった。