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こうえんのはなとどくが

公園の花と毒蛾

小川 未明

「朝日新聞」1922(大正11)年6月26日~7月10日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 18,574 字 · 38 页

青空文庫

十二

その後は、ベンチによりかかった男のため息ばかりが、闇の中でしたのであります。

十二

翌日の朝は、いい天気でした。白い雲が、静かにこずえの頂を離れて、空に流れていました。とこなつの花は、ぐったりとしていました。そして、いつになく元気がなかったのです。どこからかみつばちが飛んできました。

「いい天気じゃありませんか。」といって、花に声をかけました。

「昨夜は、恐ろしい夢を見て、今日は、頭が重くてしかたがありません。」と、花は答えました。

「どんな夢をごらんになりましたか? ほんとうに顔の色がよくありませんね。あなたは、だいぶん疲れておいでのようですから、お大事になさいまし。」と、みつばちがいいました。

とこなつの花は、一昨夜、黄色な蛾がきたことを語りました。すると、みつばちは、花のいうことを半分も聞かずに、

「なんで夢のもんですか。みんな事実ですよ。この公園には、黒い百合の花が咲いたり、不思議な毒蛾がきたりしたために、人間が大騒ぎをしていますよ。あなたは、まだなんにもお知りになりませんか。」と、みつばちはいいました。

とこなつの花は、これを聞くと、

「黒い百合の花が咲いたのですか?」