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かんこんそうさいはかせ

冠婚葬祭博士

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,762 字 · 30 页

青空文庫

女性の欺瞞能力

女性の欺瞞能力

「今度の日曜? それは、君、少し独断的じゃないですか?」

と清水君がむずかしい顔をした。僕は大谷君との関係を発見した直後、経緯を報告して、次の日曜に大谷君のところへ遊びに行くことになったと言ったのである。

「さあ。何故でしょうか?」

「若し大谷君のところへ先にお出になるようなら主客顛倒でしょうと僕は念を押して置いた積りです。大谷君よりも誰よりも僕が一番初めから御懇意に願っているんですから」

「成程」

「日曜を取消して戴けませんか?」

「承知しました。あなたの方が先約ですから、大谷さんの方は断ります」

「然う分って戴ければ僕も主張しません。斯うしましょう。僕の方は明日ってことに定めましょう。明日なら僕の方が一日早い次第です」

「はあ」

「理窟を言うようですけれど、矢張り大義名分ってことは明かにして置く必要がありますよ」

翌日は土曜だった。清水君が一日先を越す勘定になる。日を争ってまで招いてくれるのは嬉しかった。新米の僕は故参の御機嫌を損じたくない。会社の帰りを清水君の新家庭へついて行った。奥さんが夕食の支度をして待っていた。款待至らざるところない。清水君としては円満ぶりを見せつける野心もあったろうけれど、無論後輩に対する親切心も動いていた。