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かんこんそうさいはかせ
冠婚葬祭博士
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,762 字 · 30 页
「交ぜっ返すなよ」
と清水君が制した。
「可笑しいことがあったんだよ。何かの式の始まる時だった。校長が教壇から小使に何か命じたが、小使さん、少し耳が遠い。校長が耳に口を寄せようとしたら、気を利かして下から丈伸びをしたものだから、その刹那、東半球と西半球がコツンコをしてしまった。皆笑ったぜ。女の先生が一人、怺え切れなくて、転んでしまった」
「ハッハヽヽ」
僕は無関心で聞いていたが、何だか覚えのあるような話だと思った。校長小使鉢合せの光景が忽ち頭の中に浮んだ。然う/\、尋常三年の時だった。と追々記憶が戻って来て、東半球の外に万国地図とも呼んでいたことを思い出した。小使は日本地図だった。これは面白い。大谷君は矢張りあの学校にいたのか知ら?
「もう一つ忘れられない印象がある。これも昨夜家で話したんだ」
と大谷君が続けた。
「おや/\、食堂会議だと思っていたら、家庭会議の延長かい?」
「まあ聞いてくれ。或日、犬が講堂へ入って来て、教壇へノコ/\上って行ったんだ。校長が追っても逃げない。全校の注目が一匹の犬に集まった。白犬だったよ。妻は尋常一年だったのに、犬の色彩までチャンと覚えているんだ」