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しゅっけものがたり

出家物語

坂口 安吾

「オール読物 第三巻第一号」1948(昭和23)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,838 字 · 28 页

青空文庫

悪気がない。皮肉ってもカンづかないところは、頭がにぶいようでもあるが、無邪気なものだ。みんな自然に白状している。けれども、あそこまでダラシなく情慾にもろくては、たよりない。飢えれば何でも、というサモしさである。けれども、底をわってみれば、人はみんな、そうじゃないか。吉や寅やドン八の女房だって、心の底はおんなじことだ。オレ自身だって、それだけのものだ。さすれば、何を怒ったんだか、見当がつかねえようなものじゃないか、と幸吉は悲しい気持になってきた。

キヨ子はそれっきり来なかった。

幸吉は叔母さんに頼んでと考え耽ったこともあったが、それじゃア益々なめやがるだろうなどと意地をたてゝいるうち、月日が流れて、気持もすっかり落ちついていた。

ある日、何かの探し物の折に火鉢のヒキダシから、例の手紙がでてきたので、何かと思い出も珍しく、読んでみると、一通の親類の女からの手紙は、この女も未亡人であるらしく又、かなり年長の様子で、同じ境遇にいたわりを寄せ、自分の日頃の日課を語って、朝は読経の三十分が落付いてたのしく、昼下りの香をたいて琴をかなでるのも心静かなものであるが、畑を耕して物の育つのを一日一日のたよりにするのが何よりで、