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きりすてごめん

切捨御免

坂口 安吾

――貞操なきジャーナリズム――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,731 字 · 10 页

青空文庫

容疑薄れると見るや、ガラリと一変して、人権を論じ、当局をせめるジャーナリズムの正義感、これ又、滑稽そのものである。

人食い事件を創作したのも、新聞ではないか。水戸の容疑者を騒ぎたてたのも、新聞ではないか。太宰情死を社会問題として騒ぎたてたのも、新聞ではないか。一方に自分で騒ぎたてながら、同じ新聞の論説めいた欄で、文士の情死など騒ぎたてる世相は苦々しいなどと、自分でやっておきながら、責任を人に押しつけているのである。どこに良心があるのであるか。新聞以外の他のいかなる職業に於ても、一方に右を指し、一方に左をさして、恥なきことは許されぬ。新聞だけが、それを行って、恬として、恥じるところがないのである。

言論の自由と称し、報道の責務と称し、その美名や権力を濫用するもの、新聞の如きものはない。新聞の犯人製造は日常のことではないか。

容疑者H画伯を衆人にさらす、人権ジュウリンではないか。然り、たしかに、人権ジュウリンである。たしかに、よろしくない。隠したいハジをあばくのが良くないことであるなら、太宰の死体だって、撮影しようとしないのが本当ではないか。彼の破りすてた遺書などを、発表しないのが本当ではないか。