轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はつつぼみ

初蕾

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,525 字 · 35 页

青空文庫

「わたくしにはできません」

お民は泣きながら云った。

「わたくしには、梶井家の嫁になる資格はございません。そうする積りもございませんし、半之助さまに対しましても」

「もういちど云います、過ぎ去ったことは忘れましょう、七年まえのあなたと、現在のあなたとの違いは、わたしたちが朝夕いっしょにいて拝見しています、旦那さまがなぜ素読の稽古までなすったか、あなたにもわからないことはない筈です」

はま女はそう云ってつと傍わらの梅の枝を指さした。

「ごらんなさい、この梅にはまた蕾がふくらみかけていますよ、去年の花の散ったことは忘れたように、どの枝も初めて花を咲かせるような新しさで、活き活きと蕾をふくらませています、帰って来る半之助にとって自分が初蕾であるように、あなたの考えることはそれだけです、女にとってはどんな義理よりも夫婦の愛というものが大切なのですよ」

お民は梅の枝を見まもった。小太郎がそっとすり寄った。そして、

「ばあや」

と低く呼びながら、お民の手に縋りついたとき、彼女は子をひき寄せ、重くつつましく頭を垂れた。

「顔をおあげなさい、民さん、……よく辛抱なすったことね」