轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はつつぼみ

初蕾

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,525 字 · 35 页

青空文庫

二

という船問屋の店であり、母が米を買う銭を借りにいったのだということは、それから数年のちに知ったのである。「山越」の船で船夫をしていた父が、熊野灘で難破した船といっしょに死ぬまで、幾たび同じことを頼みに母子三人でその店へいったかわからない。お民も母や兄といっしょにおじぎをし歌うような調子で店の人に頼み言を云った。幼なごころにも情けなく恥かしくて、しまいにはおろおろと泣きだしながら。

……父が死んでから、母はしるべをたよってこの二見へ来た。二見浦の浜にある藤屋という宿へ、下女奉公のような勤め口があり、太市とお民と三人、物置よりみじめな小屋をあてがわれて新しい暮しを始めたのである。もちろんそこの生活も苦しかった。母の稼ぎでは三人の米も満足には買えず、九つになる太市も八つのお民も、走り使いをし、子守りをし、水を汲み、掃除の手伝いをした。宿の主婦が評判のしまりやで、使い走りも子守りも、ちゃんと度数で駄賃がきまっていたから、時にはその度数を多くしたいばかりに、海から吹きつける寒い風に曝されながら、夜おそくまで使いがありはしないかと待ち更かすこともあった。

二

兄の太市が十二で死に、母はお民が十三の年に亡くなった。