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とねがわのあゆ
利根川の鮎
佐藤 垢石
「つり人」1948(昭和23)年4月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,875 字 · 10 页
お国自慢
この鱒は、次第に鮎と共に上流へ遡ってゆき、利根川の流れを水力電気の堰堤が中断せず、また上流地方の山林が乱伐の災いを受けないで、夏でも水量の多い時代は、沼田からさらに上流の支流薄根川、赤谷川の水源地まで遡り込み、本流は上越国境の雪橋、雪渓のあるあたりの渓間にまで遡り込んで、山や谷が錦繍の彩に飾られる十月中旬から産卵をはじめたのである。
そんな次第で、私の故郷の地元の利根川へは、遅くも四月下旬には鮎の群れと鱒の群れとが姿を波間に現わした。
お国自慢
五月の利根川の若鮎は、私が食べた鮎のうち最もおいしい一つであるというのは、それはお国自慢であろう。
穀物、野菜、魚鳥、いずれの食べものも、幼いときから親しんだ郷土の産物は、味そのもののほかに、人生にとって切っても切れないつながりを持っている。食べものは、郷土の山川草木と共に、また己と共に、自然が産んでくれた友である。幼いときに口にした物の味わいが、一生わが想いにおいしいものとして残るのは当たり前であろう。私はお国自慢を恥じない。
秋の大根、初夏の莢豌豆、盛夏の胡瓜、寒中の冬菜。そのどれにもこれにも、幼いときからの味の記念が蘇るのである。