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こくこく
刻々
宮本 百合子
「中央公論」1951(昭和26)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页
二人の若者は、きっちり坐っている膝頭に両手を突っぱり、
「俺たちのような、ヤクザとは違うんだから全く気の毒です」
と云った。自分は一寸でも脳の刺戟を少くするため、額をひやしている手拭を両目の上まできっと下げて置くように頼んだ。
いつもならとうに鼾がきこえている時刻なのだが今夜はどの監房も目をさましている。それでいて別に話し声もしない。自分は廊下に、窓の方を頭にして横になった。
翌朝、平常どおり八時に出勤して来て凡そ十時頃から、やっと今野を病院へ入れる評定にとりかかった。主任が両手をポケットに入れてやって来て、
「どんな工合かね」
というから、自分は待ちかねていたと云い、若し病院が面倒なら、斯う斯ういう病院へ紹介していいからと、せき立てた。
「ふむ」
未練そうにもう一度病人を見下し、出てゆく。次に部長が来て、同じことを繰返す。係りの特高が来る。困ったねエと金歯を出していう。そして、その辺を歩いて、出て行く。丁度、じりじりと悪くなるのを番していて、とことんになるのを待っていると云うようである。
午後一時頃やっと決心したらしく主任が来た。
「じゃもうすぐ入院するようにしるから」