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こくこく
刻々
宮本 百合子
「中央公論」1951(昭和26)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页
ガラガラと戸をあけて金モールをつけた背の高い司法主任が入って来た。片手でテーブルの上に出してある巡邏表のケイ紙に印を押しながら、看守に小声で何か云っている。顔の寸法も靴の寸法も長い看守は首を下げたまま、それに答えている。
「ハ。一名です。……承知しました。ハ」
金モールが出て行くと、看守は物懶そうな物ごしで、テーブルの裏の方へ手を突込み鍵束をとり出した。そして、私のいる第一房の鉄扉をあけ、
「さア、出た」
鍵の先で招き出すような風にした。私が立ち上ってそのままあっち向きにぬいであるアンペラ草履をはこうとしたら、
「その紙なんかも持って……引越しだ」
と云った。
「引越し? どこへ?」
よそへ廻されるのか。瞬間そう思った。が、看守はそれに答えず、
「あっちにゴザのあるのを持って来て」
と命令した。便所へ曲ったところに二枚ゴザが巻いて立てかけてある。その一枚を持って来ると、そこへ敷いた、と廊下の隅、三尺の小窓の下を顎で示した。
「さア、そこへ坐るんだ」
何でも夜前つかまった強盗を入れるために、一房をあけたらしい。
自分が廊下を行き来するのを、ほかに見るもののない監房の男たちがじっと眺めているのだが、岨が大きな声で、