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こくこく
刻々
宮本 百合子
「中央公論」1951(昭和26)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页
マルクス主義作家として、という文句のところである。
「変えない」
「――いいかね?」
「いけないことがあるんですか?」
薄い唇を曲げ、
「マルクス主義作家ということは窮極において党員作家ということだよ」
「――私は、字のとおりマルクス主義作家と云っているのです」
中川は暫く沈黙していたが、前歯の間に煙草を銜え、煙をよけるように眼を細めて両手でケイ紙を揃えながら、
「これで帰れるかどうか知らんよ。だがマア君がこれでいいと云うならいいにして置こう。――僕にとっちゃどっちだって同じこった。そうだろう? ハッハハ」
黒い舌の見えるような笑いかたをした。
それきり中川は現れず、本当に自分は帰れるのか帰れないのか分らぬ。留置場の時計が永い午後を這うように動いているのなどを眺めていると、焦燥に似た感じが不意に全身をとらえた。これは全然新しい経験なのであった。自分はこのような焦燥を感じさせるところにも、計画的な敵のかけひきを理解した。
六月二十日、自分は一枚の新聞を手にとり思わず、
「ああ!」
と歓びの声をあげた。顔がパッと赤くなった。十九日の日本プロレタリア文化連盟拡大中央協議会は、開会、即時解散をくったが、文化団体として前例のない勇敢なデモが敢行され、新聞はトップ四段抜きでその報道をのせ、築地小劇場の会場が混乱に陥った瞬間の写真が