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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页
が、この頃から物音に驚き、お長屋の窓や潜門が開き、人々が顔を出し、
「どうしたのだ?」
「火事か?」
「盗賊か?」
などと、口々に罵った。
要介はそこで、大音に叫んだ。
「悪漢、鴫澤家に禍いたし、この界隈に隠れ居ります。お出合い下されお探し下され」
「行け」「探せ」と人々は叫び、追っ取り刀で走り出して来た。
「向こうだ」
「いや、こっちでござろう」
四方の露地や小路に駆け込み、あそこかここかと探し廻った。
次から次、屋敷から屋敷へと、この騒動はすぐに伝波し、家中の武士、夜廻りの者、若党、仲間などが獲物を携え、ここの一画を包囲して、陣十郎を狩り立てた。
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向こうでも人声がし、こちらでも人声がした。疑心暗鬼から味方同志を、敵と間違え声を上げたり、「居たぞ」と叫んで追って行き、それが知り合いの同僚だったので、ドッと笑う声がした。
いつの間にか敵は一人ではなく、大勢であるように誤伝されたらしく、あそこの露路に五人居ましたぞ、勘兵衛殿のお長屋の塀に添って、三人抜刀して居りましたぞなどと、不安そうに云い合ったりした。
辻を人影の走って行くのが見えたり、屋敷の庭の松の木などに登って、様子を窺っている人影なども見えた。