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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页
と恋しい人を、苦しい息で血を吐くように呼んだ。
「拙者でござるぞ、杉浪之助で! 気が付かれたか、拙者でござるぞ!」
そう呼ぶ浪之助の顔を見詰め、しばらく澄江は不思議そうに、ただハッハッと荒い息をしたが、
「お、お――、貴郎様は……いつぞやの晩……あやうい所を……」
「お助けいたした杉浪之助! 再度お助けいたしたは、よくよくの縁、ご安心なされ! それに致してもこの有様は?」
「は、はい、有難う存じます。ご恩は海山! ご恩は海山! ……お兄イ様ア――ッ」とまたも呼んだ。
「お兄イ様とな? 主水殿か? ……その主水殿、如何なされた?」
「敵……父上の……父上の敵……陣十郎に巡り逢い……切り合う間に兄上には、陣十郎に誘き出され! ……向こうへ、向こうへ、向こうへ行き……そのまま姿が見えずなり……お兄イ様ア――ッ」とまたも呼び、再び気絶したらしく、ぐったりとなりもたれかかった。
「おおそうか、さてはお二人、兄妹お二人敵討ちの旅に、お出でなされたと伝聞したが、その敵の水品陣十郎に、おおそうか、さてはここで、お出逢いなされて切り合ったのか。……それにしても無双の悪剣の使手、陣十郎と太刀打ちしては、主水殿に勝目はない。