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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

「よかろう、やれ!」と命知らず共、担いでいた澄江を抛り出すと、脇差を抜き無二無三に、浪之助と藤作とに切ってかかった。

「殺生ではあるがその儀なれば」

刀を引き抜き浪之助は、ムーッとばかりに中段につけた。

性来堕弱の彼ではあり、剣技にも勝れていない彼ではあったが、三カ月というもの秋山要介に従い義侠の精神を吹き込まれ、かつは新影流の教えを受けた。名人から受けた三カ月の教えは、やくざの師匠の三年に渡る、なまくらの教えより功果がある。今の浪之助というものは、昔の浪之助とは事変わり、気魄横逸勇気凜々、真に大丈夫の俤があった。

その浪之助に構えられたのである。

博徒共は怖気を揮った。

三人顔を見合わせたが、誰云うともなく、

「いけねえ」

「逃げろ!」

三方に別れて逃げてしまった。

と見て取った浪之助は、刀を鞘へ納めるのも忙しく、澄江の側へ走り寄り、地に膝突き抱き介え、

「澄江殿! 澄江殿!」と呼ばわった。が気が付き、

「これは不可ない。気絶して居られる、では、よし」と、急所を抑え「やッ」と活だ!

6

「あッ」と澄江は声を上げ、息吹き返し眼を見開らき、茫然と空を眺めたが、

「お兄イ様ア――ッ」