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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

そこで要介は主水の方に向かい、大音をもって呼びかけた。

13

「鴫澤氏、主水殿! 敵水品陣十郎を追い詰め、見事に復讐をお遂げなされ! 拙者、要介、秋山要介、貴殿の身辺に引き添って、貴殿あやうしと見て取るや、出でて、必ずお助太刀いたす! ……心丈夫にお持ちなされい! ……これで可い、さあ行こう!」

街道目掛けて走り出した時、

※(歌記号、1-3-28)今は変わって千の馬

五百の馬の馬飼の

と、聞き覚えある源女の声で、手近で歌うのが聞こえてきた。

「や、……歌声! ……源女の歌声!」

要介は足を釘づけにした。

探していた源女の歌声が、手近の所から聞こえてきたのであった。足を止めたのは当然といえよう。

「源女殿! お組殿!」

思わず大声で呼ばわって、要介は四辺を忙しく見た。

丘、小山とでも云いたいほどに、うず高く聳えている薮以外には、打ち開けた耕地ばかりで、眼を遮る何物もなかった。

(不思議だな、どうしたことだ。……歌声は空耳であったのか?)

陣十郎の感じたようなことを、要介も感ぜざるを得なかった。

「先生、どうしたんですい、行っておくんなせえ」

要介に足を止められて、胆を潰した藤作が怒鳴った。