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げきだん「わらうようま」
劇団「笑う妖魔」
山本 周五郎
「少年少女譚海」1938(昭和13)年夏期増刊号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,705 字 · 18 页
――待てよ、こいつは電話で呼び出した奴がよこしたのかも知れないぞ。
そう思ったので、その紙丸を披いてみると、果して中には鉛筆の走書でみっしり何か書いてある。五郎は戦く胸を押えながら読んだ――そこには驚くべき文字があった。
五郎よ、僕はおまえの兄、あのやくざな一郎なのだ。――僕はいま、劇団「笑う妖魔」の一座で道化役をしている。
「兄さん、兄さんが……」
余りに思いがけない文句だった。不良少年として新聞に書かれたとき家出したまま、今日まで行方の知れなかった兄、その兄が外人劇団の道化役になって現われたのだ。
こうなる迄の筋道を話している暇はない、僕はこの劇団の或る重大な秘密を握った。それをおまえの手から父さんに渡して貰いたい。それで一昨日電話をかけたのだが来て呉れなかった。昨日はゆき子にも電話したのだが、これも到頭こなかった。奴等は僕が秘密を嗅ぎ出したことを知っているらしい。僕は厳重に看視されている。だから秘密を握っても渡す方法がなかった。然し今日こそ盗み出してやる。そしておまえに渡すのだが、僕は一歩も出られない。渡す方法は一つしかないのだ。――いいかい、五郎はここにある切符で見物席へ入るんだ。