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『りゅうせいがしゅうおよびげいじゅつかん』について

『劉生画集及芸術観』について

和辻 哲郎

「中央美術」1921(大正10)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,678 字 · 10 页

青空文庫

もしこの言葉が芸術家の楽屋落ちを弁護するために、すなわち「芸術家のための芸術」の意味において用いられるとすれば、それはこの言葉を真実に生かしているとは言えない。

自分は美の王国への情熱が岸田君の生活の中核となり、その製作に人類的事業としての覚悟がこめられていることを、愉快に思う。「人類」を口にすることは近ごろの流行である。しかし真実に「人類」を感じているものが、我々の前にどれほどあるだろう。人類を自己の内に切実に感ずるとき、価値の階級は初めて如実に感得せられる。低劣なる価値に没頭して一切の高き価値に無関心なる雰囲気においては、価値は明らかに逆倒せられ人類の意志は歪にせられている。岸田君のいわゆる「世界の美術の病気」とはこれであろう。ここに人類の意志を明らかにし、真実の価値の階級を樹立することは、大いなる価値の実現のために、従って人類のために、目下緊急の大事である。

なお岸田君の著書に著しい「内なる美」、「装飾」、「写実」等の考え方についても、一言付加しておく必要を感ずる。岸田君が内なる美の直接に現わされたものを装飾とし、自然に触発せられて現わされたものを写実とする見方は、きわめて興味の深いものである。