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かご
加護
宮本 百合子
「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页
長い時間と、身が切られるような失敗を経験させられた友が、ようよう来るべき所へ来たのだという感動と、その道では先輩であるという明るい誇とで熱くなったお幾は、お恵さんが折々目をあげて彼女を見たほどの雄弁で蓄えられていた神の加護を披瀝した。
翌朝七時にもならないうちに、お幾は、ことごとしい紋服でお恵さんの家を訪れた。彼女に連れられて、お恵さんは生れて始めて、注連(しめ)を張り渡した天理教会の門を潜ったのである。
とうとう、お恵さんを天理教の信者、少くとも信心への第一歩を踏み出させたお幾の悦びは、例えるものもないという風に見えた。
友達に会うと、彼女は一人一人に、
「まあ今度は、あのお恵さんもね、我を折ってとうとう神様にお縋り申すようになりましたよ。有難いもので長年の誼(よし)みなどというものは、矢張りどこかに、神様の御心があるのですね、まあまあこれで、やっと私も一つ御奉公が出来ました」
と、吹聴する。
誰の目にも、彼女は悪意のない得意の絶頂にいると見えた。今まで何かにつけて、自分の鈍い感化力を嗤(わら)っていた友達も、もう云うことは見出せまい。あんなに難しそうに見えていた一大事を、あれほど手際よくしおおせられようとは思わなかった。