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かご

加護

宮本 百合子

「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页

青空文庫

人間が、ただ肉体の安逸のみを貪る時、現れる神の憤りは、どれほど激しいものであるか。教祖ほどの卓越した婦人でも、自分の勝手から、何か神の御旨を奉じないことがあると、他人の力や薬の力では、何ともしようのない苦悩に遭った。あなたの体の苦しいのも、或は、魂のどこかに、怖ろしい懈怠心が起り始めたので、神様が予告して下さるためではないだろうか、というのが、お幾の推論なのであった。

「ほんとに、信心は、一大事ですよね。全く教祖様のおっしゃった『谷底へ落ち切れ』でね、神様から拝借ものの体を、我慾で劬(いたわ)っているうちは、どうしたって、本当の道には達しられないのです」

自分の雄弁に自ら酔い、謹聴してくれる友の顔を見ると、お幾は、自分の身などを顧る余裕がなかった。福音の伝道者のように、彼女は亢奮を覚えた。

単純なお幾は、それなら、実際、自分がどれだけの労役を信仰のために勤めているか、また、お恵さんの生理的状態は、事実に於てどうなのか、考える暇もなく、熱烈な発奮を促したのである。

彼女に、仮借しない調子で、

「あなたの御信心は、そもそもの始りから、自分一身だけの安楽のためばかりでは、おありなさらないでしょう? いわば購いのためなのですものね。