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かご

加護

宮本 百合子

「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页

青空文庫

神様というものはもともと……」お幾はチラリと相手を偸見(ぬすみみ)た。

「決して罪のない者に飛んだ不仕合なんかはお授けにならないものなのですものね、だから、若しあるなら早く――」

「神様のお怒りに触れる――何をおっしゃるんでしょう! お幾さん」

お恵さんはぼんやりと自分に凭(もた)れていた二人の子を突除けるようにしていずまいを正した。急な緊張に驚いて、我知らず面をあげたお幾は、思わず身が縮むような何物かを、お恵さんの瞳の裡に読み取った。

お恵さんは感違いをしたのだ、ひどいこと! いやな、いやなこと! 本能的にお恵さんが思ったことを直覚するとお幾は、サッと顔の色を変えながら、あわててお恵さんの膝に手をかけた。

「まあお恵さん、どうぞ! 私決してそんな積りで云ったのじゃあないのですよ、ただ、ね、お恵さん、私信心しているものだから……」

救いを求めるような手を、お恵さんは静かに自分の膝から払いのけた。

「お幾さん、私はこれでも及ばずながら人の妻としてすべきことだけは尽した積りでございます。たといあなたが、どんな積りでおっしゃっても、私は決して神の怒りに触れるようなことをした覚えは夢にもございません、爪の垢ほどもございません」