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すけごろうよざい

助五郎余罪

牧 逸馬

「探偵趣味」1926(大正15)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,407 字 · 15 页

青空文庫

相手を出入り先の下男とばかり思い込んで、望月は言葉遣いさえも一段下げる。

「へえ」助五郎は朴訥らしくもじもじした。

「ああ、これから美倉へ出て――」

「へえ、美倉橋を渡りますだ」

と言いながらさては浅草の和泉屋かと、助五郎は釣り出しを掛けて置いて後を待った。望月は好い気で、「橋を右へ折れて蔵前か、へっへっへ」

蔵前の和泉屋、すると、あの質屋看板の物持和泉屋に相違ないが、そこの道楽息子が最近長唄の名取りになったところで、それが杵屋であろうと岡安であろうと、別に天下の助五郎の興味を惹くだけの問題でもなかった。

決して物盗りではなく、又単なる力試しでもないことは大勢の通行人の中から又七だけを選んだことで充分解るとしても、要するにこれは芸人仲間の紛糾から根を引いての意趣晴しに過ぎないかも知れない。若しそうとすれば、わざわざ出て来た助五郎は、正にとんだ見込み外れをしたわけで、ここらであっさり手を離した方が案外利口な遣り方でもあろう――が、ともすれば、瓢箪から鯰の出度がる世の中である。それに、ここまで来て手ぶらであばよは助五郎の世話役趣味がどうしても許さなかった。