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どうりょくかくめいとにほんのかがくしゃ

動力革命と日本の科学者

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1955(昭和30)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,399 字 · 27 页

青空文庫

五 電力の問題と科学者

日本の勢力消費率を見ても、戦争前には、電力は石炭の六分の一に過ぎなかったが、一昨年は、逆に一・一倍にはね上がっている。今後も毎年約一割ずつの電力の増産をしなければ、近代産業の競争にはついて行けない。しかも電力の値上げは、最小限度に食い止めなければならない。競争に落伍すれば、食糧の輸入もできなくなり、バスも止まってしまう。

こういう羽目に陥って、日夜苦慮している責任の地位にある人にとっては、科学者の議論などが、抽象的に響くのも、無理からぬ点がある。ところでこういう焦眉の急を要する問題について、科学者側から、何らかの具体的な提案が為されたという話は、不敏にして、未だ知らない。ところが科学などに理解のないはずの八十歳の老実業家から、最近この問題について、提案があり、それが新聞紙上に松永構想として、報道されたのを読んで、いささか忸怩たる感を抱いたわけである。

五 電力の問題と科学者

この構想の詳しい紹介または批判を、ここでするつもりはない。しかし新聞記事では、従来の水主火従を止めて、火主水従という革新的な案を提出した、ということになっていた。日本のような水に恵まれた国で、そんな馬鹿な話があるはずはない。