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どうりょくかくめいとにほんのかがくしゃ

動力革命と日本の科学者

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1955(昭和30)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,399 字 · 27 页

青空文庫

それほどに言わなくても、消極的ではあるが、とにかく日本の鉄道は、日本の国情という条件の下では、欧米のいわゆる先進国と、立派に対抗しているわけである。ところで問題は、こういう業績の基盤となっているものは何か、という点にある。それは、オリンピック的な意味での日本の科学ではなくて、下積みの大勢の技術者の多年にわたる努力である。そういう人たちの名前は、恐らく一生の間に、一度も新聞などには、出ないであろう。しかし与えられた条件の下で、最も能率をあげるということが、科学の任務の一つである。われわれの学生時代、大正年間の日本には、中村清二先生のような学者がおられて、こういう教育をみっしり仕込まれたものである。中村先生は、日本における物理実験学の父とも称すべき人である。実験の指導中、くり返し諭されたことは、「十分の一ミリまで測れる機械で、十分の一ミリまで精確に測ることが精密な測定である。千分の一ミリまで測れる機械で、百分の一ミリまで測っても、それは不精確な測定である」というのである。

科学を人生から切り離して、純粋に科学だけの世界についていえば、もちろん百分の一ミリまで測る方が、十分の一ミリまで測るよりも、精度は高い。