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ほっかいのなみにさらわれたが

北海の波にさらわれた蛾

小川 未明

「童話」1926(大正15)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,968 字 · 10 页

青空文庫

」

一群の蛾が、花びらを振りまいたように、空を飛び舞ったのです。つづいて蛾の大群が大空をかすめて、先へ飛んでいった、蛾の群れのあとにつづきました。

しかし、こんなに、みんながこの深林を見捨てて、出発した後にも、二十や、三十の蛾は、みんなといっしょにゆかずにあとにとどまりました。

「私たちは、ここで生まれたのだ。ここで暮らしましょう。そのうちに、きっとおもしろい、幸福なことがあるにちがいない。」と、残った蛾たちは、語り合ったのでした。

りんごばたけに移った蛾の群れは、明るい日を送りました。やわらかな、あたたかな風は、白いりんごの花の上を吹いて、昼となく夜となく香っています。彼らには、この美しい殿堂が、自分たちのために造られたのではないかと思われたほどでした。

「こんなに、明るい、住み心地のいい場所があるのに、なんで、あの暗い林を恋しがって、あのひとたちはいっしょにこなかったのだろう。」と、あとに残った蛾を笑ったのでした。

りんごの木は、びっくりしました。どこからこんな小さな、白い羽虫が飛んできたろうかと思ったのです。けれど、べつに、自分たちに害を加えるものでないと知ったときに、花は、蛾たちに向かって話しかけました。