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じゅうにしこう
十二支考(上)〔全2冊〕
南方 熊楠
南方熊楠『十二支考(上)〔全2冊〕』。同一底本的分册已合并为一书。收入:十二支考、十二支考、十二支考、十二支考、十二支考。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 290,735 字 · 566 页
野猪をいうとなん、野猪は蛇を好んで食う、殊に蝮を好む由なり。予在米の頃、ペンシルヴァニア州の何処かに、蛇多きを平らげんとて、欧州より野猪を多く輸入し、放ちし事ありし。右の歌、蛇を悪魔とせしは、耶蘇教説に同じ。梨と言い掛けた山梨姫とは、野猪が山梨を嗜むにや、識者の教えを竢つ。
三河国池鯉鮒大明神の守符、蛇の害を避く。その氏子の住所は蛇なく、他の神の氏子の住所は、わずかに径を隔つも蛇棲む。たといその境雑るもかくのごとし(『甲子夜話』続篇八〇)。和歌山近在、矢宮より出す守符は妙に蝮に利く。蝮を見付けてこれを抛げ付くると、麻酔せしようで動く能わずというが、予尋常の紙を畳んで抛げ付けても、暫くは動かなんだ。世に蝮指というは、指を緊張して伸ばし、先端の第一関節のみ折れ曲がりて、蛇の鎌頸状を成すので、五指ことごとくそうなるを苦手といい、蛇その人を見れば怖れて動かず、自在に捕わるそうだ(『郷土研究』四の五〇二)。予の現住地の俗信に、蝮指の爪は横に広く、癪を抑うるに効あり、その人手が利くという。拙妻は左手のみ蝮指だから、亭主勝りの左利じゃなかろうかと案じたが、実は一滴も戴けませんから安心しやした。