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じゅうえんさつ

十円札

芥川 竜之介

穷得叮当响的作家堀川保吉,口袋里只剩六十钱,却还惦记丝帽、音乐会和女人。一张十円钞票的出现,能让他体面地撑过这一天吗?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,647 字 · 18 页

青空文庫

が、前借の見込みも絶え、父母兄弟とも喧嘩をした今は、――いや、今はそれどころではない。この紀元節に新調した十八円五十銭のシルク・ハットさえとうにもう彼の手を離れている。………

保吉は人のこみ合ったプラットフォオムを歩きながら、光沢の美しいシルク・ハットをありありと目の前に髣髴した。シルク・ハットは円筒の胴に土蔵の窓明りを仄めかせている。そのまた胴は窓の外に咲いた泰山木の花を映している。……しかしふと指に触れたズボンの底の六十何銭かはたちまちその夢を打ち壊した。今日はまだやっと十何日かである。二十八日の月給日に堀川教官殿と書いた西洋封筒を受け取るのにはかれこれ二週間も待たなければならぬ。が、彼の楽しみにしていた東京へ出かける日曜日はもうあしたに迫っている。彼はあしたは長谷や大友と晩飯を共にするつもりだった。こちらにないスコットの油画具やカンヴァスも仕入れるつもりだった。フロイライン・メルレンドルフの演奏会へも顔を出すつもりだった。けれども六十何銭かの前には東京行それ自身さえあきらめなければならぬ。

「明日よ、ではさようなら」である。

保吉は憂鬱を紛らせるために巻煙草を一本啣えようとした。