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じゅうえんさつ
十円札
穷得叮当响的作家堀川保吉,口袋里只剩六十钱,却还惦记丝帽、音乐会和女人。一张十円钞票的出现,能让他体面地撑过这一天吗?
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,647 字 · 18 页
が、手をやったポケットの中には生憎一本も残っていない。彼はいよいよ悪意のある運命の微笑を感じながら、待合室の外に足を止めた物売りの前へ歩み寄った。緑いろの鳥打帽をかぶった、薄い痘痕のある物売りはいつもただつまらなそうに、頸へ吊った箱の中の新聞だのキャラメルだのを眺めている。これは一介の商人ではない。我々の生命を阻害する否定的精神の象徴である。保吉はこの物売りの態度に、今日も――と言うよりもむしろ今日はじっとしてはいられぬ苛立たしさを感じた。
「朝日をくれ給え。」
「朝日?」
物売りは不相変目を伏せたまま、非難するように問い返した。
「新聞ですか? 煙草ですか?」
保吉は眉間の震えるのを感じた。
「ビイル!」
物売りはさすがに驚いたように保吉の顔へ目を注いだ。
「朝日ビイルはありません。」
保吉は溜飲を下げながら、物売りを後ろに歩き出した。しかしそこへ買いに来た朝日は、――朝日などはもう吸わずとも好い。忌いましい物売りを一蹴したのはハヴァナを吸ったのよりも愉快である。彼はズボンのポケットの底の六十何銭かも忘れたまま、プラットフォオムの先へ歩いて行った。ちょうどワグラムの一戦に大勝を博したナポレオンのように。