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じゅうえんさつ
十円札
穷得叮当响的作家堀川保吉,口袋里只剩六十钱,却还惦记丝帽、音乐会和女人。一张十円钞票的出现,能让他体面地撑过这一天吗?
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,647 字 · 18 页
保吉は麦藁帽の庇の下にこう云う景色を眺めながら、彼自身意識して誇張した売文の悲劇に感激した。同時に平生尊重する痩せ我慢も何も忘れたように、今も片手を突こんでいたズボンの中味を吹聴した。
「実は東京へ行きたいんですが六十何銭しかない始末なんです。」
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保吉は教官室の机の前に教科書の下調べにとりかかった。が、ジャットランドの海戦記事などはふだんでも愉快に読めるものではない。殊に今日は東京へ行きたさに業を煮やしている時である。彼は英語の海語辞典を片手に一頁ばかり目を通した後、憂鬱にまたポケットの底の六十何銭かを考えはじめた。……
十一時半の教官室はひっそりと人音を絶やしている。十人ばかりの教官も粟野さん一人を残したまま、ことごとく授業に出て行ってしまった。粟野さんは彼の机の向うに、――と云っても二人の机を隔てた、殺風景な書棚の向うに全然姿を隠している。しかし薄蒼いパイプの煙は粟野さんの存在を証明するように、白壁を背にした空間の中へ時々かすかに立ち昇っている。窓の外の風景もやはり静かさには変りはない。