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ちはやかんのめいろ
千早館の迷路
海野 十三
「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页
しかし粋月の雇人の中には、兼吉も実は田鶴子と同じ目的地へ行ったんではないかと噂をしている者があった。
兼吉とは何者ぞ。親の代からの料理人で、この粋月に流れこんで来たのは七八年前で、今年四十二になる男だという。その他のことは分らない。
こんなわけで、結局帆村は、田鶴子の跡を追うことにしたのである。それで春部カズ子を連れて那谷駅で下車したんだが、この那谷駅で下車するということは、もう一つ別の方向よりする示唆があった。それは例の千早館に赴くのはこの駅で下車するのが順路であり、そして千早館は駅前から出る黒岳行のバスに乗り、灰沼村で降りるのがよいと分っていたのである。
(田鶴子は千早館へ行ったのに違いない)
帆村は確信をもって、そう解釈していた。
3
灰沼村の停留場で下車したのは、帆村と春部の二人の外に、土地の人らしい一人の老婆があった。この三人が、バスが行ってしまった後に残された。
「お前さんがたは、又千早館へ行く衆かね。やめたがいいね。悪いことはいわないよ」
婆さんは、胡散くさそうに帆村とカズ子を見くらべていった。
「あ、お婆さん。親切にいってくれて、ありがとうよ。