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ちはやかんのめいろ

千早館の迷路

海野 十三

「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页

青空文庫

千早館の評判が高いもんだから、私たちもちょっと好奇心を起して見物に来たんだが、そんなにあそこは危いところかね」

帆村は馴々しく老婆に話しかけた。

「行かないがいい、行くんじゃないよ。悪い怨霊が棲んでいるところだよ、村の者はそれを知っているから容易に近寄らねえが、都の衆はずかずか入り込んで皆怨霊の餌食になっちまうだよ」

老婆は恐ろしそうに肩をすくめた。

「怨霊の餌食になったところを、誰か見た者があるのかね」

「見た者はねえけれど、餌食になり果てたことは誰にも知れているよ。その証拠には、駅を下りて千早館へ向った若い者の数と、それが引返して来て汽車に乗って行った者の数とが、うんと喰い違っているって、駅員さんは言っとるがのう。帰って行った衆は、ほんの僅かの人数だとさ」

「中に泊り込んでいるんじゃないかね」

「ばかいわねえこった。あんな八幡の藪しらずのような冥途屋敷の中に、どうして半年も一年も暮せるかよう。第一その間、ちょっくら姿も見せねえでおいてよう」

「なるほど。で、その八幡の藪しらずというのは何だね」

「わたしも話に聞いただけだが、なんでも千早館の中に入ると、廊下ばかりぐるぐる続いていて、気味がわるいといったらないってよ。