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うまいち

午市

宮本 百合子

「婦人公論」1922(大正11)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,146 字 · 17 页

青空文庫

――

夜の空に、その燈籠の長い房々や子供らしい色の華やかさが余程綺麗に思われたのだったろう。十何年振りかで図らずそれらしいものを見、彼女は変らない懐しさを感じずにはいられないのである。

――気を奪われて歩いているうちに、いつか通りは楽になり、露店の絶えた処に出た。

左右には、びっしりと、高い大きい家々が立ち並んでいる。それらの建物の通りに面した下の方は、その中に見せ物でもあるように、格子一重の中が通り抜け自由になっているらしい。ちらほら人影があるばかりで、明るい往来も、建物の周囲も、あの雑沓の中から来ると嘘のようにひっそりしているのである。

心付いて、おせいは四辺(あたり)を見廻した。そして、小声で、

「ここがそうなの?」

と、夫に訊こうとした時、黙って歩いていた小関が、急に話し出した。

「まあ、ここいら辺からぼつぼつ中心に向うんですがね……さびれていますねえ」

彼は、健介達に、賑いの絶頂でない処を見せるのが如何にも残念そうに呟いた。

「然し、どうです? なかなか堂々たるもんでしょう? 近頃すっかり模様は変りましたがね……どうです通り抜けて見ようじゃあありませんか」