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うまいち

午市

宮本 百合子

「婦人公論」1922(大正11)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,146 字 · 17 页

青空文庫

後につき、おせいは我知らず眼を瞠(みは)りながら、とある格子の内側に歩み込んだ。

一目見たときはまるで生花(いけばな)の展覧会かなぞのように思われる。手摺をつけ、幕をしぼりあげ、正面に、幾つも幾つも大きな女の写真を並べて懸けた下には、立派な木札に、黒々と値段を書いたものが出してある。――

言葉もなく見廻し、彼女は不可解な感に打れた。

木炭か鉛筆かで、こすって描いたように艶のない、どれもこれも同じような女の顔は、むやみに明るい燈火の下で、まるで幽霊のように見える。

隅の方に台を控えて、ぽっつりと男が一人いるきり、物を云う者とてもない中に、人とも思えない、たくさんの女の顔が、灰色と際立った白とで、くすみ、無表情に、凝(じ)っとこちらを眺めているのである。

おせいは見ていると無気味にさえなった。ここに生きた人間がいることさえも疑われて来るようだ。この陳列写真の一重の彼方を覗いたら、何にもないがらん洞が風に吹かれて拡がっているかとも感じられる。しかも、麗々と明るみにさらされた金高を示す文字を見ると、彼女は、額が痛むほど、何か本能的な痛苦を感じずにはいられないのである。