轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はんのすけしゅうげん
半之助祝言
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页
あの爺いである、あのおうへいな口をきく、庭番の元締みたような、鯉の専門家の爺いである。さすが半之助はぎくりとしたらしい、慌てておじぎをし、あいそ笑いをして、
「これはどうも、その節はどうも」と気分を柔らげるように云った、「――知らなかったものですから、まさか貴方が御城代だなんて、なにしろ偶然ですし、鯉が……ああ鯉で思いだしましたがあの黒はまだあれですか、やっぱりまだ、その……」
半之助は黙った。
図書助は睨み殺すような眼つきでまばたきもせずにこっちを見ている。鯉なんぞくそくらえという顔だった。そして、半之助が黙ると、天床板がびりびりするような、ずばぬけて大きな咳をし、
「これが折岩と申すやつか」
と前田甚内に向って叫んだ。半之助は思わず首を縮めておじぎをした。
半之助は勤めだした。といっても格別なにも用はない、公務関係の仕事にはその係りの者が五人、べつに部屋を宛がわれていて、城中との連絡も必要な事務もすべて処理する。半之助はただ図書助の側にいればいい、勤務時間は午前九時から午後五時。休日は月二日という定めであった。
就任の挨拶に出た翌日のことであるが、半之助は午の弁当のあとで夫人の部屋を訪ねた。