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はんのすけしゅうげん

半之助祝言

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页

青空文庫

酒ぬきの、ごく質素な食膳を見たとき、折岩半之助はいやな顔をした。それは躾けの悪い喰べざかりの子供が、嫌いな物を出されたときの表情によく似ていた。没頭社長は予期していたとみえ、あだ黒いようなその飯に向って箸を突込みながら、

「私どもは剛健の気を昂奮させるために、日常こういう食事をしておるですが、江戸などではどんなあんばいですかな」

こう云って、なるほど剛健の気に昂奮しているような眼をした。その飯は麦六、稗二、もろこし一、米一の割だそうである。

半之助は社長の問いにも答えず、自分は満腹だからと云って箸も取らなかった。

食事が終るとすぐ、その会食の目的である密談に移った。

「貴方の赴任された使命については、もう論議の余地はないであろうが」

没頭社長がおもむろに云った。

「――私ども玄武社同人としても、無関心ではおられぬので、いちおう貴方の方針も聞き、私どもの意見も申し述べたいと思う」

「どうぞ云って下さい、聞きましょう」

半之助は軽く頷いた。

弥九郎は咳をし、幹部たちの顔をすばやく見まわし、それから、大いに意気ごんで言葉を続けた。

彼は能弁ではあったが、要領を把む術に欠けていた。