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はんのすけしゅうげん
半之助祝言
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页
むやみに埴谷図書助の非を述べ、慷慨し、そして笙子という令嬢を警戒せよと云った。令嬢のことは前後五回も云った、そしてまた埴谷城代の非をならし、慷慨し、額の汗を拭いて反った。
半之助はつまらなそうに聞いていたが、令嬢のことは特にうるさく感じたとみえ、ぶっきらぼうにこう反問した。
「そんなにむずかしいとすると、その娘は縹緻の悪い売れ残りか、出戻りとでもいうわけですか」
「とんでもない、冗談じゃない」立原平助が眼を丸くして叫んだ、「――そんなことを仮にも貴方、いや冗談じゃないですよ」
葵太市が側から説明した。
笙子嬢は埴谷城代の一人娘であり、類の稀な美貌と才気で、家中の青年たちぜんたいのあこがれの的である。但しひじょうに勝ち気が強く、少しでも機嫌に障ることがあると、それこそ眼球がとび出すようなめにあわされるので、さすが父親の図書助も彼女だけには頭があがらないというのであった。
「そこには些かの誇張もないのです」没頭社長が念を押した、「――貴方はやがて埴谷邸へ日勤するわけであるから、この点をくれぐれもお忘れにならぬよう、いいですか、どんなばあいにも決して令嬢の機嫌を損ぜぬように、さもないと……おわかりでしょうな」