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まんじ

卍

谷崎 潤一郎

「改造」改造社、1928(昭和3)年3月~1929(昭和4)年4月、6月~10月、12月~1930(昭和5)年1月、4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,618 字 · 258 页

青空文庫

と、夫の口でええようにいいくるめさして、ほっと一と安心してたところが、記事はそいから何日たってもしまいにならんと、一層深刻に真相に触れて来て、綿貫に不利な事実かて遠慮なしに発き出したばっかりか、笠屋町の宿のこと、奈良い遊びに行ったこと、光子さんお腹に物詰めて夫に会いなさったこと、……それが、綿貫の知ってるはずないことまでも分ってるらしいて、この調子やったら、浜寺のことから狂言自殺のこと、夫渦中い巻き込んだこと、何から何まで素ッ葉抜きそうな勢いやのんです。それにおかしいのんは、光子さんも私もお互に遣り取りした手紙大事にしもといて、誰にかて見せたことあれしませんのんに、私の方から上げた中の一通が、――えらい猛烈な、動きの取れん文句並べたある一通が、――いつの間にやらちゃんと窃まれてて、れいれいしいに写真に出されましたのんで、取ったとしたらお梅どんより外にないさかい、さては綿貫とグルになってるないうこと始めて気い付いたのんですが、そないいうたら、光子さんとこ暇出されてからも二、三べん私とこい遊びに来て、用もないのんにウロウロしてたことあって、何や様子けったいな、するだけの事はしてやったのんにまだお金でも欲しいのんかいな思いましてんけど、そないにしてやるにも及ばん思てつい放ったらかして置きましたら、何でも新聞に