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なんぽうものがたり

南方物語

小川 未明

「赤い鳥」1928(昭和3)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,065 字 · 11 页

青空文庫

こうして、いつということなしに、つばめは北方へ飛んでいけば、人間は自分たちを保護してくれるものでこそあれ、けっして害を加えるものでないことを知ったのであります。

夏のおわりになると、つばめは、北から南へと、紫色のつばさをひろげて、帰ってゆきました。

冬のない南方は、まだ真夏であります。湖の水は、銀のごとく、日の光を反射していました。片方は、高いがけになって、ちょうど切り落とされたように、赤い地はだを静かな水の面にうつしていました。

そのがけの半腹に、円いあなをうがって、一家族のつばめは、巣をつくりました。そして、子どもを、あなの中に産みそだてていました。

ある日、親つばめは、そのあなの中から出て、湖水の上を矢のようにかけてゆきました。ちょうど、そのとき、あのしげみに、一羽のかわせみが、しょんぼりとしてたたずんでいたが、頭の上を通りかかるつばめを見ると、急に声をかけて、呼び止めました。

つばめは、何事かと思って、舞い下りると、一本の強そうなあしに止まったのであります。

「どうなさったのですか。」と、快活に、つばめはたずねました。

「弟はどうしたのでしょう、まだ帰ってこないのですが、あなたは、ごらんになりませんでしたか。