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なんがをかくはなし

南画を描く話

中谷 宇吉郎

「中央公論」1941(昭和16)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,968 字 · 24 页

青空文庫

その蟹はなるほど名品であって、少し身を起して石の上に立ち上ろうとした姿が如何にも生きていた。よく見ると、どうもその秘訣の一つは、歩脚の先の指節にあるらしく、針のように細いしかし強い線で描かれた指節の突端が、石に喰い入っていた。それが効いているらしい。

それで早速それを応用して見ることにした。結果はなかなかの好成績である。少し気が咎めるが、絵が巧く出来たのだから、まあ我慢することにしよう。こういう時に、創意は摸倣の集積なりという言葉は、ちょっと便利である。

こうして名画が出来上って見ると、今度はその上に素晴らしい賛が欲しくなった。今までの賛は大抵女学生向きだとの吉田さんの評が前にあったので、一つ相談をして見た。「自然は人間よりも空想的であるというのはどうだろう」と聞いて見たら「今度の蟹はなかなか傑作だから、一つ僕が賛をしよう。その文句をラテン語に翻訳して書いてやろうか」と言う。吉田さんのラテン語には私は余り信用を置いていないので、それは断った。そしたら「それでは英語で我慢しよう」と言って、速座に「To create is divine; To imagine, human」