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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

「まあ」と叫ぶと娘の民弥は仰天して立ち上ったが、見る見る顔色を蒼白くした。と、グッタリと牀几の上へ、腰を下ろすと喘ぎ出した。

「一足違い! 一足違い!」

「何?」とばかり右近丸。

「売り渡しましてございます」

「誰に※(疑問符感嘆符、1-8-77)」と右近丸は胸をそらせた。

「今しがた来た古道具買に……」

「誠か※(疑問符感嘆符、1-8-77)」と云ったが嗄声である。「で、そやつ、どの方角へ?」

「はい……一向……その辺りの所は……」

「ご存じないと云われるか?」

「存じませんでございます」

ここに至って右近丸は落胆したというように、牀几にべッタリ腰かけてしまった。苦心が水泡に帰したのである。又九仭の功名を、一簣に虧いてしまったのである。落胆するのは当然である。

しばらく二人とも物を云わない。互いに顔さえ見合わさない。溜息を吐くばかりである。

すっかり夕の陽も消えた。窓外がだんだん暗くなる。花木の陰が紫から、次第に墨色に移って行く。

と、俄に右近丸は勢い込んで飛び上ったが、「うっちゃって置くことは出来ません、たとえ京の町は広くとも、探して探されないものでもなし、立ち去って間もないというからには、あるいはこの辺りに古道具買徘徊して居るかも知れません。