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なんばんひわもりうこんまる
南蛮秘話森右近丸
国枝 史郎
「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页
で苦心して道を辿り、京都の町へ帰って来て、自分の家へ戻ったが、右近丸のことが気にかかってならない。
が、ああいう親切なお方だ、今日は訪ねて下さるだろうと、心待ちに待っていたのであったが、今迄待っても姿を見せない。そこで目当てはなかったが、とにかく町へ出てお探ししてみようと、今彷徨っているのであった。
ここは室町の通りである。午後の日が華やかに射している。道も明るく、家々も明るく、歩いている人も明るかったが、民弥の心は暗かった。
全く宛がないのであった。
どこへ行ってよいか解らないのである。
まるで放心したように、歩く足さえ力なく、ただフラフラと歩いて行く。
先刻から民弥のそういう姿を、狙うように見ている男があった。
年の頃は六十前後、半白の頭髪、赭ら顔、腰を曲げて杖を突いているが、ほんとは腰など曲がっていないらしい。鋭い眼、険しい鼻、兇悪な人相の持主である。
それが民弥へ話しかけた。
が、話しかけたその瞬間、老人の顔は優しくなった。故意と優しく作ったのである。
「これはこれはお嬢様、よいお天気でございますなあ」こんな調子に話しかけた、親切らしい猫撫声である。