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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
竹内の冗談口に、会話は俄にはずんできた。彼はいろんな方面にもぐり込んでるだけに、単なる学生である皆の知らないような話を、いくつも持っていた。その上、彼はその晩変に饒舌だった。一人で会話を奪っていった。白っぽく取澄した顔をしてお清がやってくると、無遠慮にその手を取って引寄せながら云った。
「まあここに坐れよ」そしてちらと周平の方を顧みた。「井上君がいやに黙ってるから、君がその代りをするさ。」
「黙ってる人があって丁度いいわ。先刻からあなた一人で皆の分を饒舌ってるじゃないの。」
彼女はぐるりと卓子を廻って、煖爐の火を見る風をしながら周平の側に一寸屈んで、それから向うへ行った。
然し周平は彼女の方へ眼をやりもしなかった。不快の念が次第に胸へたまってきていた。気持の上のこだわりを自分でどうすることも出来なかった。我慢すればするほど益々悪い結果になりそうだった。
彼は立ち上って、思い切って伸びをしてみた。
「すっかり暖くなっちゃった。」と彼は云った。「今晩少し用があるから、僕はこれで失敬するよ。」
「もう行くのか。」と竹内が、軽蔑的に口を尖らして彼の顔を見上げた。