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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

「君とはだいぶ暫くぶりだったね。……おい、水曜日にも横田さんの所へ少し来いよ。勿論君は、始終あの家へは行ってるだろうが。」

それを黙って見返した自分の眼付が、殆んど敵意に近い色を帯びてるのを、周平は自ら感じた。そして軽く頭を下げながらつと立ち去った。

扉を押して外に出ると、ぞっと寒気がした。其処へ、後から村田が追っかけてきた。

「僕も帰るから、其処まで一緒に行こう。」

周平は急に涙ぐましい心になって、彼の手を握りしめようとしたが、思い返してそれを止した。自分自身に対して腹が立った。

乾ききった冷たい空気が、風とも云えない風をなして、襟の裾の間から吹き込んできた。街灯の光りが冴えきってるのに、物の隅々が妙に薄暗かった。

「不愉快な奴だな。」と村田は呟いた。

竹内のことだと分っていたが、周平は何とも云わなかった。下宿の方へ足を向けると、村田はなお別れないでついて来た。可なり暫くたってから、彼は突然云った。

「何処かへ寄ってゆかないか。」

眼を地面に落したままで、独語のような調子だった。いつもと様子が異っていた。周平は横目でじろりと見て、すぐに応じた。

「寄ってもいい。