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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
がその瞬間に、村田が口を開いた。
「止せよ、つまらない。屁理屈や喧嘩は今晩一切封じちまうんだ。したけりゃ酔払った後にしろよ。」
「然し井上は僕に……。」と竹内は云いかけた。
「後にしろ。酔っ払ってからのことだ。」
「賛成!」と大声に叫んだ者があった。
周平は黙って杯を取った。皆が一時に饒舌り出した。とってつけたような饒舌り方だったが、それがやがて本物になっていった。全部で八人だった。皆可なりもう酔いかけていた。
食卓の真中に二三本洋酒の瓶が立っていて、食い荒した料理の皿が周囲に散らばっていた。お清はそれを持ち去ろうともせず、なお新らしい料理や日本酒を運んできた。可なり贅沢でまた乱雑だった。
「なるほど、この方が賑かでいいや。」と誰かが云った。
「見給え、幹事有能だろう。」と村田が応じた。
話は、食物のことから、菜食主義のことになり、一転して享楽主義の論となり、天才の本質は純粋享楽だというようなことから、脳力と性慾との問題に及び、文学や美術に現われてる女のモデルと作者との関係から、やがて猥褻談に落ち、それからまた四方に枝を伸していった。それを中心として、一つの問題に長く止ってる者もあれば、正月の計画を隣りの者に囁いてる者もあり、皆の話を聞き流しながら口笛を吹いてる者もあった。