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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

帰りに氷を買ってきた。氷枕をさしてやった。――隆吉は初め軽い風邪にかかったのだそうである。それが変にこじれて、気管支加答児となり、高い熱が出た。或る日などは唾液に血が少し交っていた。肺炎にでもなりはすまいかという恐れがあった。然し非常に辺鄙な土地なので、いい医者が近くになかった。病気に神経質な保子は、兎に角東京へ帰ったがいいと云い出した。それで、横田だけ後に残って、保子と隆吉とが至急に帰ってきたのだそうである。

医者は都合して早く来てくれた。丁寧に診察した。病気は気管支加答児だけで、それも大したことはないそうだった。吸入に湿布に、熱があれば氷枕、過激な運動を避けること、それだけが手当の全部だった。

周平は医者の家へ薬を取りに行った。途中で郵便局に寄って、病軽し安心せよと横田へ電報をうった。医院へ行って処方箋を出すと、顔の大きな頭の禿げた薬局生が小窓から覗いて、御病人は如何ですかなどと云った。周平は厭な気がした。

可なり長く待たされた後、薬を貰って外に出ると、もう薄暗くなりかけていた。彼は知らず識らずに足をゆるめた。慌しいようでしめやかな夕暮のなかを、何処までもゆっくり歩いて行きたい気がした。